木戸、裸電球、路地で遊ぶ子どもたち——。残されたアミューズメントパーク「南市」で、昭和な世界にタイムスリップしよう。
こんにちは、上海ナビです。中国という国に、日本の古き良き時代の風景を探しにくる旅行者は今もたくさんいるようです。でも、特に上海はどこに行っても高層ビル。比較的古い街並の残る豫園や近郊の水郷はあるものの、商魂たくましいおみやげ屋のおばさんに日本語で「ミテミテ〜、ヤスイ」などと言われては興ざめしてしまいますよね。いったいどこに行けば自然な庶民の生活を見られるの? と思っている方は多いはず。そんな方にこっそりお教えしたいのが、今日ご紹介する「南市」です。
場所は
豫園の南側。地下鉄の駅からはやや離れているので、8号線「老西門」駅からタクシーで行くことをオススメします。「河南南路、蓬莱路」と告げればOK。5分ほどで河南南路と蓬莱路の交差点に到着します。
そこから東に進んで行きましょう。とにかく、細い路地を見つけたらどんどん入って行きます。大通り「河南南路」から、一本路地を入ればそこは古い街並の残る別世界。
今日ナビが歩いた道をまずはざっとご紹介します。細い路地が網の目のように入り組んでいるので、どこをどう行くというご説明はできないのですが、この界隈全体が「南市」と呼ばれています。地図にも載っていないような路地をめぐるのがここの醍醐味。思い切ってせまい路地の方へ、どんどん入って行きましょう。これらの道以外にも、無数の路地が交錯しています。
歩いているうちに、こんな風景が現れます。
〜のんびりゆったり暮らす街の人たち〜
戦後のような街並が広がる「南市」。時間が止まったような街に暮らす人々は、ライフスタイルもこれまたとてものんびりしています。お天気が良かった今日は、たくさんの人がお昼寝していました。
外で遊ぶ子どもたちもいっぱい。
路上で働く大人たちがいるから、子どもも外で安心して遊べるんですよね。
のんびり度を示す極めつけはこれ。空き巣などの被害が多い上海でも、この界隈は木戸に鍵をかけていないようなんです。大事なものも外に置きっぱなし。ドアにはこんなことが書いてあります。
「私はこの23日間に自転車3台、携帯2つ、洋服4枚、食用油1本、現金1000元をなくしました。お願いですからもう盗まないで。お願い、お願い!」
思わず持ち帰りたくなってしまうようなレトロ雑貨が無造作に外に置いてあります。でも、撮るのは写真だけにしましょう。
つれて帰りたくなっちゃうような子たちも放し飼いです。
木戸に貼ってある「春聯」も味があります。でも、記してあることは現代的。中国が打ち上げたロケットと、万博開催を祝う言葉が書いてあります。
〜開発の手が迫る街〜
ナビの知人に、この界隈の家の2階をアトリエにしている上海人の画家がいます。彼女は、「この街を保存、復元できたとしても、各家庭から漂ってくる夕食のにおいや夫婦喧嘩の声、子どもたちの走る音までは保存できない。だから私はここに住んで、今のこの界隈のありのままの姿を描き続けたいんです」と語ってくれたことがありました。
でも、今日歩いてみて一部取り壊しの始まっているエリアがあることに気づきました。遠くを見れば高層ビルが迫ってきています。
ここに並ぶ民家は、ほとんど水洗トイレを所有していないそうです。ガスもないところが多く、住民たちも大半がお金さえあればマンション暮らしを望んでいると聞きます。こんな懐かしい風景が見られるのもあとわずかかもしれません。
〜南市の出口〜
ぐるぐる歩き回って迷ったら、ひたすら北を目指しましょう。すると、交通量の多い大通り「復興東路」に出ます。
そのまま北上すれば徒歩20分ほどで豫園付近到着。遠くにはテレビ塔や上海ヒルズも見えます。ここが意外と市の中心部だということが分かってびっくりするはず。
いかがでしたか? 外国人向けのおみやげ店どころかコンビニもない「南市」。でも、こんなありのままの上海人の生活を壊してきたのは、もしかしたら私たち外国人観光客なのかもしれないとも思いました。「南市」に出かける際は、他人の生活圏に入って行くときのマナーをくれぐれもお忘れなく。
言葉はできないけど住民たちと交流してみたいという方には、ペットの写真を撮ることをオススメします。上海人のおばちゃんたちは、自分のペットの写真を撮られることが大好き。「レンズを見なさい!」「吠えちゃダメ!」など、ペットに指示を出してまで写真を撮らせてくれますよ。ぜひお試しを。以上、上海ナビがお伝えしました。