唐代詩人・張継の『楓橋夜泊』でその名が有名になった寺へ、詩にも詠まれたあの鐘を鳴らしに行こう!
こんにちは、上海ナビです。
蘇州の市中心部から西へおよそ20分車を走らせると、日本でもその “ 除夜の鐘 ” が有名な 「寒山寺」 があります。
南朝梁武帝の天監年間 (502~519) に創建されたと言われる歴史ある寺院ですが、その創建当初は 「寒山寺」 という名前ではなく、“ 妙利普明塔院 ”、また寺院のすぐ西にある楓橋にちなんでか “ 楓橋寺 ” とも呼ばれていたそうです。
しかし、何よりこの寺院を有名にしたのは、唐代の詩人だった張継が詠んだ 『楓橋夜泊』 という一遍の詩。そこには、鐘の音のこともちゃんと詠われているんですよ。
「寒山寺」 の出入り口は西と東に計2箇所あるんですが、楓橋の運河に向かっているこの西側の入り口の方が有名ですね。「照壁墻」 と呼ばれるこの黄色い壁に刻まれた “ 寒山寺 ” という三文字は、周囲の景観と共にこの寺院の顔にもなっています。
照壁墻の奥には “ 千年古刹の寒山寺へようこそ ” とデカデカ掲げられる寺門が控え、ここからいよいよ境内がスタート!
通常なら入場券の裏側に内部のマップが描かれているんですが、「寒山寺」 のものはありません。入り口近くに寺院内マップがあるので、ここで何となく内部の感覚を掴んでからいくと動きやすいですよ。
~では、境内の様子を順にご紹介しましょう~
★大雄宝殿
山門を抜けると、目の前には寒山寺の本殿 「大雄宝殿」 がドンと構えているのですが…。残念! ナビが行った時期はちょうど補修工事を行っていて、その立派な姿を拝むことも叶わず。
聞く所によると、殿内にある釈迦像の背後に “ 寒山拾得図 ” という彫刻が配置されているそう。ここには、唐の貞観年間 (627~649年) にこの寺院が 「寒山寺」 と改名される由縁ともなった当時の住職、寒山と拾得の2人の姿も刻まれているんだとか。
今日は寺院建築らしくない姿になっている 「大雄宝殿」 でしたが、左に 「羅漢堂」、右に 「大悲殿」 と三方を囲まれたこの空間には、お香の煙と香りと共に厳粛な空気が流れています。
★羅漢堂
中国の寺院でよく目にするのが、羅漢堂。その多くは、建物の中に入ると等身大より少し大きいかな?というサイズの何百人 (300~500体とか!) もの羅漢像が並んでいるんですが、「寒山寺」 の羅漢堂はいわばそのプチサイズ。
中央に鎮座する仏様の背後のショーケースに、黄金のミニ羅漢像がズラ~リと並びます。羅漢堂独特のあの恐怖感 (ズラリと並ぶ中にいると怖いですよ) はありませんでした。
★大悲殿
中央右手に建つのが 「大悲殿」。文字だけインスピレーションでは “ …すごく、悲しい?! ” と感じる相変わらず悟りの無いナビ。ご存知の方も多いかと思いますが、仏教での “ 大慈大悲 ”、つまり仏様の広い広~い慈悲の心を表す言葉なんでしょうね。
「大悲殿」 の脇にある通り道を抜けると 「常楽池」 と名付けられた池が姿を現しました。寺院の池にはうってつけのネーミング。池の周りではアヒルさんがノンビリしていますよ。
この池の脇を抜けて、「大悲殿」 の裏手にあたる 「碑楼」、「弘法堂」、「鐘房」 のある一角へ行ってみましょう。
「鐘房」 の前までやってくると、いきなり数羽のアヒルが唐突に現れて少しビックリ。からかうと攻撃してきましたが、暫く戯れると慣れた様子でカメラのレンズを向けるとスッと背筋を伸ばすではありませんか。
やっぱり、お寺だからね。背筋をシャンと伸ばして行きましょう!
★鐘房
横に見える 「鐘房」 には大小様々な歴代の鐘が飾られています。
「寒山寺」 で何が有名かって、やっぱり “ 鐘突き ” でしょうか。特に大晦日は凄いそうで、鐘を聞きに多くの観光客が訪れるほどだそう。
現在鳴らされている鐘はここではなく、この先の 「鐘楼」 にあります。
★弘法堂
この小さな一角がお気に入りな様子のアヒルたちを、向かいから静かに見守っているのが 「弘法堂」。この中には弘法大師、鑑真、玄奘三蔵の像がありますが、日本人にも聞き覚えのある名前が並びますね。みんなこの寺院で修行したんだとか!実は凄いお寺かも…。
いよいよ、寒山寺名物の 「鐘楼」 までやってきました。この黄色い二階建ての建物が、よくガイドブックなどでも紹介されている、あの “ 鐘突きの塔 ” です。境内を散策している間も、ここから聞こえてくる鐘の音が何ともいえぬ心地良さ…。「鐘楼」 内に入るためには別途5元のチケットが必要。脇にあるチケット売り場で購入してから楼内に入ります。
この鐘楼の近くに建つ石碑には、先にもお話した張継の有名な詩 『楓橋夜泊』 が刻まれています。書体といい、この石碑の見た目といい、風流!
刻まれる詩は、次のようなものです
月落烏啼霜満天 月落ち烏啼いて霜天に満つ
江楓漁火対愁眠 江楓漁火愁眠に対す
姑蘇城外寒山寺 姑蘇城外の寒山寺
夜半鐘声到客船 夜半の鐘声客船に到る
1人3回まで鐘を鳴らせるんですが、ナビの前に入っていった中国人の男性は2人分のチケットを購入し、2階へ上がるや凄い勢いで6回鳴らすじゃありませんか! 鐘の音は “ 響きの余韻 ” こそがステキなのに~。ということで、ナビは落ち着いて、雅やかに3回鳴らしてみせました。
そんな兄さんに題して 「鐘とボク」 の写真撮影を頼まれ、激写するナビ(非公開)。
なお、この鐘を鳴らせるのは 7:30~17:00 まで。
チケットは終了の5分前まで販売されていますよ。
★寒拾殿
「鐘楼」 からさらに北へ進むと、「寒拾殿」 に到着しました。勉強不足なナビはまたもや「大悲殿」 の時と同じく “ 寒さを拾う … 侘しい感じ? ” と、また大きな勘違い。
これは、高僧の寒山と拾得の2人に由来する場所なんです。だから 「寒拾殿」 !
当初、殿の意味を分からぬままに殿内に祀られる像を見て、またキョトン。
仏像ではなく、なんとも楽しげな2人の姿が。これこそが寒山と拾得なんですね。見ていてホントに愉快気な表情なんです。
この2人、実はこの寺院に来る以前は全くの敵対関係にあったそう。和解の後、この寺院内で一緒に時を過ごしたそうですが、“ 仲良きことは美しき哉 ” !
寒拾殿の横をさらに北へめざすと、次の見所 「普明宝塔」 が見えてきました。五層の塔は、2階まで登れるようになっています。
塔の中に入ると、同じ (ように見える?) 姿の4体の仏像がそれぞれ東西南北を向いて座っています。中国寺院の仏像前には予め “ 撮影禁止 ” と表示されていることが多いんですが、そうでなくても信仰心の高い人々が拝む姿を前に撮影しちゃぁイカンなーと思ってしまいます (表示が無ければ時々撮っちゃう … )。
塔の上から周囲の風景を眺めた様子です。遠くに先ほどの 「鐘楼」 が見えますね。
さて、塔から降りてくると、下でカップルが何かやっています。しげしげと観察していると、このカップルに限らずみんなお金を向かいの屋根の上に向かって投げているんですね。簡単そうに見えて、一発では決まらない様子。
屋根の上をよくよく見てみると、たくさんのコインが!
これがうまく乗っかると、幸運がやってくるというジンクスなんでしょうか?
皆さんお試しあれ!
塔を囲む回廊を歩くと、片方には合計何体あるのか分かりませんが金色の仏像がズラリと並び、もう一方には様々な書体が刻まれた石碑が並んでいます。草書体から象形文字に近いようなものまで、そのバリエーションもさまざま。
★寒山丈室
もうすぐ寺院の最北端に到達しようかというところで、横額に 「寒山丈室」 と書かれた建物が出てきました。建物の中はお店っぽい雰囲気だったんですが、建物前に並ぶ巨大な赤蝋燭が印象的。
「寒山丈室」 の脇には、かなり以前に作られ使用されていたモノ?のような鐘や、仏様の彫られた石碑などが何気なーく置かれています。たまたま、ここに置けるから置いているだけ、という感じです。
★観音峰
寒山寺の北の出口に近づいた頃、“ 観音峰 ” と彫られた大きな太湖石が登場しました。蘇州の庭園でよく見られるこの太湖石は、当然古ければ古いほど価値が高く、ある時期以降の物はニセモノ(といいますか、“似せ物”と言った方がいいかしら?)も多いといわれる貴重な奇石と言われています。
最後はこの観音峰のある緑眩しい裏庭からお別れです。
この峰の北側に出口があり、寒山寺へはこの北側から南へと見ていくルートもあるんですよ。いずれにしても、お寺をでると楓橋路へと出てきます。
中はそんなに広くないので、色々じっくり見物しながら歩いても1時間とかかりませんでしたよ。
ちなみに…。寒山寺は大晦日の鐘が本当に有名なんですが、そこで 「鐘楼」 の鐘を1回鳴らすと10年若返ると言われているんです。しかも、普段なら5元の鐘つき価格が、その日は到底信じられないくらい高騰するらしいですよ!
ならば、皆さんここは観光の合間に5元で3回鳴らして満足しようではありませんか!
以上、蘇州からナビがお伝えしました!