清代にミャンマーから運ばれてきた2体の玉仏で有名な、市中心北部にある禅宗寺院。
こんにちは、上海ナビです。
上海観光では見所として登場する機会が少ない寺院巡り。上海にも寺院はいくつかあるんですが、観光ついでに足を運べ、かつある程度見ごたえのある規模の寺院となると本の一握り。そんな上海のお寺事情ですが、今回は代表的寺院の1つ 「玉仏寺(玉佛寺)」 を皆さんにご案内しようと思います。
※2014年8月より5年の工期で改修工事が行なわれています(2014年8月追記)。
市内北部に位置する玉仏寺(玉佛寺)は、清代の1882年に創建されたという上海では比較的新しい禅宗寺院です。当時、普陀山 (上海の東側に位置する中国四大仏教名山の1つ) の慧根上人が国内霊山からチベット、ミャンマーへと向かった際、ミャンマーで大小5体の玉仏を授かることができたそうな。その後、普陀山への帰途に立ち寄った上海で、民衆のために2体の玉仏をこの地に残し、その2体を祀るために 「玉仏寺(玉佛寺)」 を建てたといわれています。
寺院があるのは、「江寧路×安遠路」 交差点の角。周辺は一般住宅地のローカルな雰囲気があり、そんな通りの中に現れるのがこの黄色い壁も眩しい玉仏寺(玉佛寺)。安遠路側に入り口があります。
この寺院は安遠路に面した山門が閉じているため、みんな山門の左手にある小さい入り口から入っていきます。入場券は入り口の脇にある窓口で購入しましょう。
門をくぐると右手に 「天王殿」、前方に 「大雄宝殿」 が見えます。「天王殿」の壁には “優秀歴史建築” の看板があり、現在の玉仏寺(玉佛寺)は清代光緒年間に創建された後、1918~1928年の間に再建されたものだと書かれていました。
「天王殿」 の左手ではお香やお守りのようなものが売られていました。聞くところによると、寺院外で売られているお香などは持ち込みができないそうですよ。
「大雄宝殿」 前では何やら建物を建築中の様子です。何か特別な縁起行事でもあるんでしょうか?その周辺では参拝に来た人々が蝋燭やお香に火をつけ、熱心に拝む姿が見かけられます。
通常はお香を焚く人の姿しか目に入ってこないんですが、今日はこの蓮の花の形をした蝋燭もとても目だっていました。これも大小さまざまで、その大きさは恐らくご供養金額に比例…。いや、こんなことを口にしてはイケマセンな!
寺院内の各所にはこのような赤い札がたくさん貼られているんです。よく見てみると、それぞれの願いが書かれていて、日本で言うところの絵馬のようなものになっています。
~まずは大雄宝殿内を見てみましょう~
★大雄宝殿
「大雄宝殿」 とは、この玉仏寺(玉佛寺)に限らず寺院の本殿となる部分で、一番大きな仏様が祭られていることが多い場所です。中に入ると刺繍も美しい赤い布がたくさん垂れ下がり、参拝者は熱心に中国式の祈祷を行っています。
内部正面には3体の仏像が祀られ、中央に釈迦牟尼仏、その右手に薬師仏、左手に阿弥陀仏と並んでいます。こちらの仏像は、髪の毛がクルクルと丸いものではなく、ツンツンとんがった形をしているんですね~。
天井にも曼荼羅図のように様々な絵柄が描かれています。ずっと上を眺めていたらクラクラして、天井の中心部に吸い込まれそうな気分になりました。
釈迦像などが祭られている場所の裏手も立派。これも、多くの寺院で共通しているんですが、下から天井まで “海、地上、天上” と3つの世界が表現されたレリーフの中に観音菩薩や釈迦様がたくさん並んでいるんですよ。
「大雄宝殿」 の正面両脇には円い形の門があります。右側の門を抜けると 「上海仏学院」や 「素斎餐庁」、「禅堂」 などがあり、左手の門から奥には慧根上人が残していった玉仏が見られる 「臥仏堂」、「玉佛楼」 など、いくつかのお堂に通じています。右からでも、左からでもグルリと見てまわることができますよ。
左手の門を抜けると赤い灯篭がたくさん並び、緑と赤のコントラストがとても綺麗。
~正面左の回廊奥には横たわる玉仏が待ってマス~
では、引き続き奥のお堂を見て行きましょう。仏様にお供えされる花や電燈などの装飾が、日本と比べてかなりビビッド、派手ですねー。
そうかと思うと傍らではなぜか刺繍や切り絵などの伝統工芸品や福の神が販売されていたり…。神聖なるものと俗っぽいものが混在した空間は、ある意味上海らしいのかも。
★臥仏
と、ナビとしては多少悩ましい空間が続きますが、そこに姿を現したのがこちら 「臥仏」と呼ばれる玉仏です。慧根上人がミャンマーで授かった2体のうちの1つで、釈迦牟尼が静かに私たちの世界から離れようとしているときの姿なんだそう。
なるほど~…。と、感慨深くこの場を離れようとしたしたそのとき、こんな看板が!またまた上海の商売魂を感じてしまうのであった。まあ、何も買うつもりは無いけれど、どういう場所なのかとりあえず偵察しておきましょうか。
そこに並ぶのはやはり、普通の (?) 伝統工芸品ばかり。置物や掛け軸、さらにはシルク絨毯まで販売されているんです。そんな商売道具に囲まれ、またもや仏様の姿が…。
でも、仏様にとってはこれが日常の光景なのでした。
★佛縁茶芸館
販売コーナーの横には 「佛縁茶芸館」 なるものが。恐る恐る覗くと、中はいたって普通の茶館ではありませんか。こちらで主に販売されているのは、一般的に寺院内でふるまわれる 「佛茶」 というものだそうですよ。そのせいか、ケースに並ぶ茶葉はあまり見かけない名前ばかり。
~ここから先は特別な空間の様相~
次はもう1体の玉仏が祀られる 「玉佛楼」 へ行きたいんですが、入り口は建物の正面右手にあるとのこと。「大雄宝殿」 の後ろを通って、入り口の方へとまわってみましょう。
さてさて、入り口が見えたかと思うと、この 「玉佛楼」 へ入るには別途10元を払う必要があるとのこと。寺院内でも別格の扱いになっているようですね。この 「玉佛楼」 の2階に座った姿の玉仏が安置されていました。
なお、こちらは撮影禁止!
それにしてもこの玉仏、乙女も羨む艶肌なんです! その姿はまさに宝のよう。
仏像前では、異国の観光客も投げキッスをしてみたり等々、それぞれの方法で祈りの気持ちを表現していました。
中で撮影できないせいか、なんとなくこの中庭の光景をバックに写真撮影している人もいました。さてさて、1階へ降りる際の階段が非常に急! 「頭上注意」 とありますが、足元にも注意してくださいね。
~寺院も、つぶさに見れば発見が!~
寺院は仏像を拝むことがメインテーマな場所なんでしょうけれど、よく見ると芸術鑑賞としての価値も! 仏様の顔や建築物に描かれる絵なども、寺院の場所や年代でいろいろ違いがあるので、そういう見方をしてみるのも味わい方の1つでは? これは、「何処どこの寺院のものに似てる!」 とかね。えっ、マニアっぽい?!
寺院キャリア初級レベルのナビが必ず注目するのは、大雄宝殿の天上とかかなァー。
「大雄宝殿」 内の両サイドにズラリと並ぶ像も、陽気な表情に見えたり怖い表情にも見えたり…。こういう印象って、見ているときの自分の心境にも左右されそうです。
目の前だけでなく、上にも注目! 「大雄宝殿」 両脇にある門の上にも、こうした装飾があるんですよー。どちらも愉快な表情です。彼らは毎日ここから一体何を見ているんでしょう?
ちょっとオカルトなモノも発見。一見ただの木ですが、よく見ると、ひゃ~っ。彫りかけなのか、このまま一生置き去りにされてしまうのは未確認。夜にご対面したくない度はぶっちぎりで1位です。
裏庭の池に居る鯉たちも、一見普通のサイズにみえますが、実はエラいデカイんです。体長は軽く50センチくらいあるんじゃないでしょうか。この鯉に与えるエサも商売として売られていました。ぬかりなし!
~こんな施設も~
寺院右手奥には仏教関係の学校施設もあるんですが、そのお隣には寺院ならではの精進料理がいただけるお店があるということで、少し覗いてみました。
★玉佛寺素菜館
営業時間 7:00~14:00、16:30~19:00
玉佛寺の住職さんたちが口にするものを元にしてメニューを作っているという精進料理のお店がこちら。一体どんなお料理が出るのか、お値段もかなりリーズナブルなので一度試してみてはいかが?
また、「法物流通処」 というショップもあり、こちらでは仏教関係のものからそうでない一般のお土産品、果てにはTシャツまでが販売されています。
お寺でTシャツ買ってみたり~♪ … ないない。
さてさて、「大雄宝殿」 正面に戻ってきました。
寺院に入った時に組み立て中だったものは、どうやら完成? いや、このひな壇のような部分にこれからもっと何かが飾られるんでしょうか?
それにしても、中国の寺院では、皆さん本当に熱心にお参りをしていきます。
熱心にお祈りをしていないのは、外国人観光客のみ(笑)。
でも、決して畏敬の念が無いわけではなく、中国式のお参りがよく分からないだけなのよ~、たぶん … 。どうぞお許しを、仏様!
皆さんも、寺院の歴史を楽しむと共に、中国人の信仰心の高さを間近で体感してみてください! 映画の1シーンで見かけたあの光景(祈祷シーン)はホンモノですよ。